6月の宮古島は、梅雨明けとともに太陽が本気を出し始める季節。じりじりと照りつける日差しの中、島の人たちが冷えたグラスに注いで飲むのが「泡盛」だ。観光客には「沖縄のお土産」として見られがちな泡盛だが、宮古島には現在も6つの蔵元が根を張り、それぞれ全く異なる個性の酒を生み出している。今回は15年間この島に暮らしてきた筆者が、地元目線で宮古島の蔵元をぐるっと案内する。
宮古島の泡盛、その「定義」を知ると味が変わる
泡盛はすべて黒麹菌(アスペルギルス・アワモリ)を使い、タイ米100%・全麹仕込み・単式蒸留という厳格な製法で造られる。日本酒やビールとは根本的に異なる製法で、長期熟成(古酒=クース)になるほど深みが増すのが特徴だ。宮古島産の泡盛は、本島とはまた違う「島の水」と「島の風土」が個性を生んでいる。まずその前提を頭に入れてから蔵元を巡ると、飲み比べの解像度がぐっと上がる。
6つの蔵元、それぞれの「顔」を知る
島の東側、城辺エリアに構えるのが多良川酒造(創業1948年)。代表銘柄「琉球王朝」「多良川」、そして古酒の「久遠」が看板だ。この蔵の最大の特徴は洞窟を使った古酒の熟成。自然の一定温度・湿度の中でゆっくりと時間をかけたクースは、宮古の地酒ファンの間で別格扱いされている。蔵見学ができる貴重な蔵元でもあるので、旅程に組み込む価値は十分にある。
平良市街地に本拠を置く菊之露酒造は宮古島最大手。「菊之露」「菊之露ブラウン」「菊之露VIPゴールド(古酒)」と、幅広いラインナップで島内スーパーや居酒屋のど定番として君臨する。最近では泡盛の蒸留かすを昆虫飼料に活用するプロジェクトや、新たな販売戦略の業務提携など、老舗でありながら新しい動きが絶えない蔵だ。
同じく平良・西原エリアの池間酒造の看板銘柄は「ニコニコ太郎」。名前の愛らしさとは裏腹に、地元の飲み屋や家庭で長年愛され続けてきた"島民の日常酒"だ。「瑞光」「さしば」「海上の道」など銘柄の幅も広く、地元ウケが高い。そして昔ながらの製法を実直に守り続ける沖之光酒造(平良)の「沖乃光」は1963年から続くロングセラー。派手な露出はないが、年配の宮古島民に「これが本物」と根強く支持されている。
伊良部大橋を渡った伊良部島には2蔵が存在する。宮の華は女性スタッフが中心となって醸す蔵で、「華翁」「ゆら」という銘柄からもその柔らかな世界観が伝わってくる。島の女性たちが贈り物に選ぶことも多い。渡久山酒造は伊良部島の地下水を仕込みに使い、「琉球泡盛 豊年」「月桃の花」を生み出す。離島の地下水が生む独特のまろやかさは、飲み比べると確かに違う。

地元民だけが知るオトーリと蔵元の深い関係
宮古島に来たなら、泡盛の飲み方も知っておきたい。宮古島独自の文化「オトーリ」とは、座の中で一人が音頭(口上)を述べながら全員に酒を注いで回す伝統的な回し飲みの作法だ。毎年開催される泡盛まつりでは「オトーリ口上」の大会が行われるほど、島の人々に深く根付いている文化である。
実は地元民の間では、オトーリに使う酒は「高い古酒より、気の利いた飲みやすい定番銘柄」が好まれるという暗黙のルールがある。「ニコニコ太郎」や「菊之露」がオトーリの場で圧倒的に消費されるのはそのためだ。観光客が古酒を贈り物に選ぶのとは、全く逆の文脈が島には存在している。
梅雨明け前の6月こそ、蔵元巡りの好機
6月はまだ梅雨の雨が残る日もあるが、だからこそ屋内の蔵見学がはかどる。炎天下を観光スポット巡りするより、蔵元の涼しい内部でゆっくり試飲しながら蔵人と話す方が、島の本質に触れられると筆者は思っている。多良川酒造の蔵見学を起点に、城辺から平良市街を経由し、伊良部大橋を渡って伊良部島の2蔵まで足を延ばせば、半日で宮古島の泡盛の全体像がつかめる。
手土産に迷ったら、古酒「久遠」や「华翁」などは箱入りで持ち帰りやすい。地元飲みを楽しみたいなら「ニコニコ太郎」を迷わずどうぞ。宮古島の6つの蔵が積み上げてきた歴史と個性を、ぜひグラスの向こうに感じてほしい。
※この記事はDAILY MIYAKOJIMAの独自取材・編集による記事です。